子どもの発達が少し気になると、「もっと良い遊びをさせてあげなくては」とつい焦ってしまうことはありませんか?
言葉が出るのがゆっくりだったり、よく転んだり、手先が不器用だったり。そんなわが子を見て、「何かしてあげなければ」という気持ちになるのは、ごく自然なことです。
でも作業療法士として多くの子どもたちと関わってきた経験から、お伝えしたいことがあります。
発達を促す遊びで、一番大切なのは「遊びの種類」ではありません。それは、子どもが夢中になっている遊びを、大人が邪魔しないことです。
「発達を促す遊び」に特別なものは必要ない
「発達を促す遊び」と聞くと、知育玩具、感覚遊び、特別な運動、工作といったものをイメージする方が多いと思います。
もちろん、それらも大切な経験です。でも、子どもの発達は大人が準備した特別な遊びだけで育つわけではありません。
たとえば、こんな日常の遊びにも、たくさんの発達の要素が含まれています。
知育玩具を買い揃えたり、特別なプログラムに通わせたりしなくても、子どもは毎日の遊びの中でちゃんと育っています。
子どもは自分に必要な遊びを選んでいる
子どもは同じ遊びを何度も飽きずに繰り返します。たとえば、我が家の娘は最近、家の中ではおままごと、外では三輪車に夢中です。
正直なところ、「もっと体を使う遊びをした方がいいかな?」「パズルとかも、もう少ししてほしいな」と思うこともあります。
でも娘は、毎日せっせとぬいぐるみにご飯を作ったり、「どうぞー」と運んだり、役になりきったりと、飽きもせずにおままごとを繰り返しています。
おままごとで育つもの
一見シンプルに見えるおままごとの中には、想像する力、言葉の表現、人とのやり取り、そしてモノを別のものに見立てる「見立て遊び」の力が育まれています。
また、手の動かし方や道具の使い方といった、日常生活に直結する能力の発達も、知らぬ間に促されています。
三輪車で育つもの
また、外へ行けば三輪車に一直線。何度も何度もこぎ続ける中で、バランス感覚や足の力、体全体の協調性、周囲を見ながら動く力といった、さまざまな経験をしています。
親から見るとただ遊んでいるだけに見えても、子どもは遊びの中でたくさんのことを学んでいます。子どもは自分に必要な経験を、自分で選び取っているのです。
「この遊びばかりで大丈夫?」と心配しなくていい
子どもが同じ遊びに熱中していると、「偏っているんじゃないか」と不安になるかもしれません。
でも、子どもの興味は意外と移り変わるものです。ブームが過ぎ去るのは驚くほど突然です。
そして、「最近全然遊ばなくなったな」と思っていたおもちゃを、ある日突然引っ張り出して遊び始めることも、よくあります。
我が家では、1歳頃にルーピング玩具を購入しましたが、少し触った後はまったく興味を示しませんでした。そして、1年以上放置していて「もうそろそろ処分しようかな」と思っていたら、急に触りだしたことがありました。

この事から、玩具の対象年齢は参考程度で、実際に興味を持った時に遊べば良いのだと感じました。
子どもの発達は一直線ではありません。こんなサイクルを繰り返しながら成長していきます。
- 興味を持つ
- 繰り返す
- 満足する
- 別のことに興味が向く
- また戻ってくる
だから「最近積み木で遊ばないから片付けよう」「もうおままごとは卒業かな」と急いで判断する必要はありません。子どもには子どものペースがあります。
親の役割は「環境を整えること」
子ども主体の遊びというと、「親は何もしなくていいの?」と思う方もいるかもしれません。
でも、実際にはそうではありません。子どもの発達を支える上で大切なのは、発達に良い遊びを教えることよりも、子どもが自分から遊びたくなる環境を整えることです。
作業療法では、遊びを支える力として「遊び心」という考え方があります。遊び心とは、遊びそのものを楽しみ、自分で遊び方を考えながら夢中になる姿勢のことです。
こういった気持ちも、遊び心の一部です。
子どもは遊び心をもとに、自分に必要な経験を選びながら成長していきます。
そのため、親の役割は遊びを指示することではなく、子どもが「やってみたい」と思ったときに挑戦できる環境や、興味を持てる物を準備し、一緒に楽しむことだといえます。
遊びの選択権は、子ども自身に。親はその舞台を整える役割です。
遊び心を引き出す環境とは
発達を促すには、遊びの内容そのものよりも子どもが自分から遊びたくなる環境が大切だと考えられています。
なぜなら、子どもは興味を持ったものに手を伸ばし、自分なりに試したり失敗したりしながら成長していくからです。
こういった環境が、子ども自身で遊びを選び、自分なりのやり方で楽しむことを後押しします。
また、子どもにとっては少し難しいけれど頑張ればできそうな「ちょうどよい挑戦」も大切です。
積み木を高く積もうとしたり、少し難しいパズルに挑戦したりする経験は、失敗と成功を繰り返しながら「やってみたい」という気持ちを育てます。
反対に、失敗しないように何でも手伝ったり、危ないからと挑戦する機会をなくしてしまったりすると、子どもが自分で考え、試す機会が少なくなります。
安全への配慮は必要ですが、大切なのは子どもが「やってみたい」と思ったときに、自分で選び、試し、楽しめる環境を整えることです。それが、遊びを通した発達を支える大切な土台になります。
良かれと思って、遊びを邪魔していませんか?
発達を伸ばしてあげたいと思うほど、「こうやってみたら?」「次はこっちで遊ぼう」と、つい口を出してしまいがちです。
しかし、大人が主導しすぎると、子どもが感じていた「自分で決めている」「自分で試している」という感覚が弱くなることがあります。
遊びを通して育つ主体性や意欲を大切にするためには、少し離れた場所から見守ることも大切です。
準備したおもちゃを本来の方法で使わないと悩む必要もありません。子ども自身が考えて遊びを作り出したなら、口出しせずに見守ってみましょう。
遊びの主役は子ども。親は遊びを教える先生ではなく、一緒に楽しむ仲間です。子どもの「やりたい!」という気持ちを大切にすることが、発達を支える一番の土台になります。
発達が気になるときは「遊びを変える」のではなく「広げる」
とはいえ、転びやすい、手先が不器用、体の使い方がぎこちないなど、気になることもありますよね。
そんなときも、新しい遊びを無理にやらせる必要はありません。子どもが好きな遊びを入り口にして、少しだけ広げていくのがおすすめです。
おままごとが好きな子なら
ボール遊びが好きな子なら
好んでいる遊びに少しだけアレンジを加えることで、経験の幅が広がります。好きなことをベースにするから、子どもも楽しみながら経験を積むことができます。
「やらされる遊び」ではなく「やりたい遊び」の延長線上に、発達のチャンスがあります。
遊びが思いつかない日は、ヒントを持っておこう
とはいえ、毎日子どもと過ごしていると、「今日は何して遊ぼう……」とネタ切れになる日もあります。そんなときは、このブログでも紹介しているような「遊びのアイデア」をヒントに関わることもおすすめです。
ただし、それは「子どもにやらせるため」のものではありません。親の引き出しを増やすためのものです。
子どもが自分から夢中になれる遊びを見つけたなら、その遊びこそが何よりの発達遊びです。
まとめ|発達を促す遊びの主役は子ども
発達を促す遊びとは、特別な知育遊びのことではありません。
子どもが夢中になれる遊びを見つけ、その世界を少しだけ広げていくこと。そして何より、子どもが集中して遊んでいるときは邪魔をしないこと。
親は遊びを教える人ではなく、遊びが育つ環境を整える人です。
「もっと良い遊びをさせなければ」と焦る必要はありません。子どもの「やりたい!」を大切にすることが、結果として発達を支える一番の近道なのだと思います。


