ぬいぐるみが大好きな我が家の娘は、只今ごっこ遊びに夢中です。ぬいぐるみを並べて何やら話しかけ、ご飯をあげたり、料理を作ったり、絵本を読み聞かせたり、寝かしつけたり。それはそれは忙しそうな毎日です。こんな姿を見ると、子どもの成長をしみじみと感じますよね。
実は、ごっこ遊びはただ楽しいだけの遊びではありません。子どもの発達にとって大切な力を育てる遊びなのです。
この記事では、作業療法士の視点から、ごっこ遊びの発達段階や、発達に与える影響、おうちでの関わり方について解説します。
ごっこ遊びとは?
ごっこ遊びとは、実際にはない場面や役割を想像しながら遊ぶことです。人形にご飯を食べさせる、運転手さんになる、お店屋さんになる、お医者さんになる。こうした遊びがごっこ遊びにあたります。
子どもは、遊びの中で大人の世界を真似しながら、少しずつ社会性を学んでいきます。一見シンプルな遊びに見えますが、その中にはたくさんの発達的要素が詰まっています。
ごっこ遊びはいつから始まる?
ごっこ遊びは突然できるようになるわけではなく、発達の段階を経て少しずつ育っていきます。
1歳頃:ふり遊び
1歳半前後から、コップで飲む真似をする、電話を耳に当てる、人形にご飯をあげるといった「ふり遊び」が見られるようになります。物を使ったまねっこ遊びは、ごっこ遊びの最初のステップです。ストーリーのあるごっこ遊びには、大人の誘導が必要な時期です。
2歳頃:簡単なごっこ遊び
単なる大人の模倣ではなく、自分から遊びを考えて展開し始めます。おままごと、お世話遊び、お店屋さんごっこなど、場面をイメージした遊びが増えてきます。生活の中で経験したことを再現するような場面設定をして遊びます。また、物を本来の機能とは異なる「別のもの」として扱うことも出来るようになってきます。
3歳頃以降:役割のあるごっこ遊び
ストーリー性を持った遊びを展開し、維持できるようになります。ママ役、お医者さん役、先生役など、役割を分担して遊べるようになります。また、経験した内容だけでなく、テレビ番組や絵本の登場人物などからアイデアを取り入れるようになります。少しずつ、複数の子どもで遊びの世界を共有できるようになっていきます。
ごっこ遊びが始まる前に育つ力
ごっこ遊びには、土台となる発達があります。ごっこ遊びが始まる前の段階で育つ力を知っておくと、子どもの遊びの様子がより見えやすくなります。
人と気持ちを共有する力
子どもはまず、「ワンワンいたね」「飛行機が飛んでいるね」と大人と同じものを見る経験を積み重ねます。こうした経験が人とのやりとりの土台になります。
その代表的な姿が「指差し」です。指差しは言葉だけでなく、コミュニケーションの発達にも大切な役割を持っています。

大人の真似をする力
子どもは周囲の大人を真似しながら成長します。
こうした模倣を繰り返しながら、少しずつできることを増やしていきます。この模倣が発達すると、ごっこ遊びへとつながっていきます。

見立てる力
ごっこ遊びでは、バナナを電話の代わりに使う、積み木を車にするなど、「別のものに見立てる力」も大切です。この力が育つことで想像の世界をどんどん広げられるようになり、ごっこ遊びに発展していきます。
ごっこ遊びで発揮される力

コミュニケーション力
ごっこ遊びは一人でもできますが、誰かと一緒に遊ぶことでやりとりが生まれます。「ここはお店だよ」「次は私がお客さんね」といったやりとりは、言葉でイメージを共有する練習でもあります。
言葉がまだ少なくても、身振り手振りを交えながら自分の考えを伝えたり、相手の意図を読み取ったりする中で、コミュニケーションに必要な力を自然に使っています。
相手の気持ちを考える力
人形に対して「痛かったね」「眠たいね」と声をかける姿を見たことはありませんか?こうした言葉の中には、自分が家族から言われて嬉しかった言葉や、日頃のやりとりが表れていることもあります。
ごっこ遊びをよくする子どもは、他者の感情をより深く理解し、協力的で穏やかな傾向があると報告されています。遊びの中で相手の役になってみたり、優しく声をかけたりする経験を重ねることで、他者の気持ちを想像する力を使っています。これは、将来の社会性や思いやりにもつながる大切な経験です。
経験を整理する力
子どもは、経験した出来事をごっこ遊びの中で再現することがあります。病院へ行った日はお医者さんごっこ、お買い物に行った日はお店屋さんごっこを始めることも少なくありません。
このように、経験したことを遊びの中で再現することで、出来事を自分なりに理解し、整理しています。そして、遊びの中で願望を充足させたりネガティブな出来事を克服したりといった、感情をコントロールする術を学んでいます。
段取りを考える力
ごっこ遊びでは、実際にはその場にない状況をイメージして、何をするか考えながら遊びます。お店屋さんなら「商品を並べてから注文を聞き、商品を渡してお金をもらう」といった、一連の流れを考えながら遊んでいます。
また、遊びの中では思い通りにいかない場面もでてきます。そんなときには、相手の反応に合わせて遊び方を変えたり、身近な物を別の物に見立てたりしながら、どうすれば遊びを続けられるか考えます。
このように、計画を立てて物事を進めたり、問題解決したり、考えを柔軟に切り替えたりといった能力を実行機能といいます。
自発性
ごっこ遊びの本質は「自発性」にあります。
自分から遊びを始めることは、大人の指導がなくても周囲の環境に適応できる能力を示しており、子どもの成長と発達に不可欠であるとされています。このことは、将来的に社会の中で自律して生きていくための基礎となります。
我が家で感じた「ごっこ遊びの成長」
近頃の娘は、ごっこ遊び全盛期といった様子で、私が夕食の支度を始めると一人でぬいぐるみ相手にごっこ遊びを展開しています。
最近では、お気に入りのYouTubeで見た“お医者さん”を真似するために、別のおもちゃを収納していた取っ手の付いた箱にお医者さんセットを入れていました。自分なりに何を使えば“お医者さん”になれるか考えているのが微笑ましいです。
娘のこのような様子は、見たことを思い出して計画し、自分で遊びを始め、「必要な物がない」という問題を身近な物を見立てて解決した姿だと感じています。
ごっこ遊びをしないと問題?
ごっこ遊びが始まる時期には個人差があります。そのため、「2歳なのにごっこ遊びをしない」という理由だけで心配する必要はありません。
このような様子が気になる場合は、発達全体を見ていくことが大切です。ごっこ遊びだけでなく、言葉、指差し、まねっこ、やりとりの様子もあわせて確認してみましょう。
気になることがあれば、一人で抱え込まず、小児科や地域の発達相談に相談してみてください。
ごっこ遊びを広げる関わり方
子どもの真似をする
まずは大人が子どもの遊びに興味を持つことが大切です。子どもの遊びを真似すると、「見てもらえた」「一緒に遊べた」という経験につながります。大人がそばで一緒に楽しんでいることが、子どもにとって何より嬉しいことです。
大人が少し演じてみる
パペットや人形などを使って、「お腹が空いたよー」「お熱が出てきたみたい」など、遊びのヒントをさりげなく出してみましょう。子どもが自分でストーリーを広げるきっかけになるかもしれません。
生活の経験を遊びに取り入れる
ごっこ遊びの初期は、普段の生活で見たことや体験したことを再現します。例えば、お買い物に行った後にお店屋さんごっこをすると、遊びが広がりやすいことも。経験したことを再現する遊びを組み立てられるような、おもちゃなどの環境設定も大切です。
「次はどうする?」と問いかける
子どもが遊びに迷ったときは、「次はどうする?」と問いかけてみましょう。子ども自身が考える時間を作ることで、遊びの流れを組み立てる力や、順番を意識する力が育まれます。
まだ難しい場合は、「次はお鍋に入れる?お皿に盛る?」など、選択肢を示してあげるのもおすすめです。
まとめ
ごっこ遊びは、単に楽しいだけの遊びではありません。
コミュニケーション、想像する力、相手の気持ちを考える力、段取りを考える力、自発性など、将来につながるさまざまな力を育てます。
そしてごっこ遊びの土台には、指差し、まねっこ遊び、人とのやりとりがあります。子どもの発達には順番があり、今できていることの積み重ねが次のステップへとつながっています。
今お子さんが楽しんでいる遊びを大切にしながら、親子で一緒に楽しむ時間そのものが、ごっこ遊びを豊かにしてくれます。
参考文献
Karen Stagnitti.Understanding play: The implications for play assessment.Australian Occupational Therapy Journal .2004,51,p.3-12.

