子どもの自己調整力とは?発達の流れと関わり方を作業療法士が解説

子どもの発達|OT視点

「すぐ泣く」「切り替えができない」「癇癪がひどい」
子育てをしていると、こんな場面に頭を抱えることはありませんか?

実はその背景にあるのが、自己調整力(self-regulation)という力です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは特別な子だけの話でも、育て方の問題でもありません。すべての子どもが持っていて、関わり方次第で大きく育てることができる力です。

この記事では、作業療法士の視点から以下の3点を解説します。

  • 自己調整力とは何か
  • どうやって育っていくのか
  • 具体的な関わり方

自己調整力とは?

自己調整力と聞くと、「我慢できる子」「言うことを聞く子」を思い浮かべる人も多いかもしれません。でも、その本質は少し違います。

自己調整力とは、自分の気持ち・行動・注意をコントロールする力のこと。もっとシンプルに言えば、「自分の内側と上手に付き合える力」です。

自己調整力は、大人の言うことをよく聞く「いい子」を育てるためのものではありません。自分の心を理解し、上手に扱える人間に育つための、とても大切な土台なのです。

自己調整力はどうやって育つ?

自己調整力は、生まれつきの才能ではなく、経験を通じてゆっくり育っていく力です。

自己調整力は「安心」から育つ

自己調整力は、「自分で頑張って身につける力」ではありません。

赤ちゃんは、不安になったときに抱っこしてもらったり、優しく声をかけてもらったりすることで気持ちが落ち着きます。このように「困ったときは助けてもらえる」という安心感は、愛着形成における安全基地となります。

そして、その安心を土台に周りの世界を探索し、さまざまな経験を積み重ねながら、少しずつ自分で気持ちを整える力が育っていきます。

自己調整力の発達の流れ

安全基地ができる(0〜1歳頃)

泣いたときに抱っこしてもらう、眠れないときに寄り添ってもらうなど、大人との関わりを通して「困ったら助けてもらえる」という安心感を育みます。

この安心感が、自己調整力の土台になります。

他者調整(0〜2歳頃)

まだ自分で気持ちを落ち着かせることは難しい時期です。

抱っこや声かけ、気持ちを代弁してもらうことで、大人に調整してもらいます。

共同調整(1〜3歳頃)

  • 「一緒に深呼吸してみよう」
  • 「お水を飲もうか」

こんな風に声をかけてもらいながら、大人と一緒に落ち着く経験を繰り返します。

大人が一緒に整えることで、衝動的な行動が少しずつ減っていきます。大人のやり方を借りる経験を積み重ね、「こうすると落ち着ける」という方法を少しずつ自分のものにしていきます。

自己調整(3歳頃〜)

自分で深呼吸したり、気持ちを言葉で伝えたりしながら、少しずつ自分自身で感情や行動を調整できる場面が増えていきます。

3〜5歳は言葉の発達・実行機能の発達・ごっこ遊びによる練習・他者理解の深まりが重なり、自己調整力が急成長する時期と言われています。

ただし、自己調整力は3歳で完成するものではなく、学童期や思春期まで長い時間をかけて発達していきます。

うまくいかない理由

子どもが気持ちを切り替えられず、なかなか落ち着けないと、ママやパパもイライラしますよね。時には「育て方が悪いの?」と自分を責めてしまうかもしれません。でも、うまくいかないのにはちゃんと理由があります。

発達の途中だから

特に2〜3歳は、「やりたい!」という気持ちが大きく育つ時期です。しかし、その気持ちを我慢したり、順番を待ったりする力はまだ発達の途中。そのため、やりたいことができなくて泣いたり、癇癪を起こしたりするのは珍しいことではありません。

感覚の影響を受けているから

音や触感への敏感さがあると、そもそも落ち着きにくい状態になります。大人でも、疲れているときや騒がしい場所ではイライラしやすいですよね。それと同じことが起きています。

気質があるから

子どもには、生まれつきの気質の違いがあります。気持ちの切り替えが早い子もいれば、じっくり時間をかけて気持ちを整理する子もいます。

大切なのは「早く切り替えさせること」ではなく、その子のペースを理解して寄り添うことです。

環境の影響があるから

スケジュールの詰め込みすぎや刺激が多い環境では、調整する「余白」がなくなってしまいます。

「わかる」と「できる」は別の力だから

「順番だよ」と言われると理解できていても、すぐに待てるとは限りません。これは、言葉を理解する力と、それを行動に移す力が別だからです。

自分の行動をコントロールする力は実行機能と呼ばれ、幼児期から少しずつ育っていきます。「わかっているけどできない」姿が見られるのは、発達の途中ではよくあることです。

自己調整力を育てる、5つの関わり方

では、具体的にどう関わればいいのか。大切なのは、「落ち着く経験」を一緒に積み重ねることです。

まず共感する

泣いていたり怒っていたりするとき、まず「イヤだったね」「悔しかったね」と気持ちに名前をつけてあげます。「わかってもらえた」という安心感が、落ち着きへの入り口になります。

落ち着く方法を「一緒に」やる

抱っこしたり、静かな場所に移動したりしながら、「こうすれば落ち着ける」という感覚を体で覚えていきます。最初は必ず「一緒に」が基本です。

落ち着いてから、シンプルに伝える

感情が爆発しているときに言葉はほとんど届きません。落ち着いてから「順番だったね」「次はどうしようか」と短く伝えましょう。

「自分で」へ少しずつ移行する

3歳以降は、「どうしたら落ち着けるかな?」と問いかけながら、自分で考えるきっかけをつくっていきます。

大人が気持ちを代弁していた場面でも、自分の言葉で表現できるように促していきましょう。

あえて「待つ」

すぐに助けすぎると、自分で調整するチャンスが減ってしまいます。子どもが自分なりに落ち着こうとする時間を、少し見守ることも大切な関わりです。

まとめ

  • 自己調整力とは、自分の気持ち・行動・注意をコントロールする力
  • 自己調整力は、一気に身につくものではない
  • 自己調整力の発達には、安心できる大人の存在が重要
  • 自己調整力の発達には、大人の力を借りる段階が必要

共感して、一緒に落ち着いて、その繰り返しの中で、子どもは少しずつ「自分の気持ちと付き合う力」を育てていきます。


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この記事を書いた人
作業療法士ママ 雀

作業療法士として発達支援に携わりながら、2歳娘の子育てに奮闘中。

このブログ「はぐリズム」では、子どもの発達や遊びについて、専門知識と子育て経験の両方の視点から発信しています。

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