「すぐ泣く」「切り替えができない」「癇癪がひどい」
子育てをしていると、こんな場面に頭を抱えることはありませんか?
実はその背景にあるのが、自己調整力(self-regulation)という力です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは特別な子だけの話でも、育て方の問題でもありません。すべての子どもが持っていて、関わり方次第で大きく育てることができる力です。
この記事では、作業療法士の視点から、
- 自己調整力とは何か
- どうやって育っていくのか
- 感情の言語化がなぜ重要なのか
をわかりやすく解説します。「うちの子、大丈夫かな」と感じているすべての親御さんに、読んでほしい内容です。
自己調整力とは?
自己調整力と聞くと、「我慢できる子」「言うことを聞く子」を思い浮かべる人も多いかもしれません。でも、その本質は少し違います。
自己調整力とは、自分の気持ち・行動・注意をコントロールする力のこと。もっとシンプルに言えば、「自分の内側と上手に付き合える力」です。
この力は、次の5つのステップで育っていきます。
①自分の気持ちに気づく
「いまイライラしてるな」「悔しいな」
――まず自分の感情に名前をつけることが、すべてのスタートです。
②気持ちを言葉にする
泣いたり叩いたりといった行動ではなく、「イヤ」「悔しい」と言葉で伝えられるようになっていきます。
③行動を選ぶ
衝動的に動くのではなく、一度立ち止まって「どうするか」を考えられるようになります。
④自分を落ち着かせる
その場を離れる、誰かに抱っこを求めるなど、自分なりの「クールダウン」の方法を身につけていきます。
⑤気持ちを切り替える
いつまでも引きずらず、少しずつ前に進める力。これが、本人の「生きやすさ」に直結します。
自己調整力は、大人の言うことをよく聞く「いい子」を育てるためのものではありません。自分の心を理解し、上手に扱える人間に育つための、とても大切な土台なのです。
自己調整力はどうやって育つ?
「うちの子、なんでこんなに癇癪がひどいの?」「いつになったら落ち着くの?」
——そう感じたことがある親御さんは、きっと多いはず。でも安心してください。自己調整力は、生まれつきの才能ではなく、経験を通じてゆっくり育っていく力です。
自己調整力が育つ3つのステップ
自己調整力は、いきなり「自分でできる」ようにはなりません。次の3段階を経て、少しずつ身についていきます。
① 他者調整(0〜1歳) 泣いたら抱っこしてもらい、あやしてもらうことで落ち着く。この時期は、養育者がすべてをやってあげる必要があります。
② 共同調整(1〜3歳) 「こんなときはこうしようね」と大人が一緒に整えることで、衝動的な行動が少しずつ減っていきます。大人のやり方を「借りる」時期です。
③ 自己調整(3歳〜) 教えてもらったことが内側に根付き、自分で落ち着いたり、気持ちを切り替えたりできるようになります。3〜5歳は言葉の発達・実行機能の発達・ごっこ遊びによる練習・他者理解の深まりが重なり、自己調整力が急成長する時期と言われています。
うまくいかないのは、あなたのせいじゃない
「関わり方が足りないのかな」「育て方が間違ってるのかな」
——そう自分を責めてしまう方もいるかもしれません。でも、うまくいかないのにはちゃんと理由があります。
- 発達の途中だから:特に2〜3歳は、やりたい気持ちは強くてもコントロールする力が追いついていない、アンバランスな時期です。できなくて当たり前なのです。
- 感覚の影響を受けているから:音や触感への敏感さがあると、そもそも落ち着きにくい状態になります。大人でも、疲れているときや騒がしい場所ではイライラしやすいですよね。それと同じことが起きています。
- 気質があるから:切り替えが早いタイプと、じっくり時間がかかるタイプがいます。これは直すものではなく、その子に合わせていくものです。
- 環境の影響があるから:スケジュールの詰め込みすぎや刺激が多い環境では、調整する「余白」がなくなってしまいます。
- 「わかる」と「できる」は別の力だから:「順番だよ」は理解していても待てないのは、言葉の理解と実行機能が別だからです。頭ではわかっていても、体や感情がついてこないことは珍しくありません。
できないのは「準備中」なだけ。努力が足りないわけでは、決してありません。
自己調整力を育てる、5つの関わり方
では、具体的にどう関わればいいのか。大切なのは、「落ち着く経験」を一緒に積み重ねることです。
① まず共感する 泣いていたり怒っていたりするとき、まず「イヤだったね」「悔しかったね」と気持ちに名前をつけてあげます。「わかってもらえた」という安心感が、落ち着きへの入り口になります。
② 落ち着く方法を「一緒に」やる 抱っこしたり、静かな場所に移動したりしながら、「こうすれば落ち着ける」という感覚を体で覚えていきます。最初は必ず「一緒に」が基本です。
③ 落ち着いてから、シンプルに伝える 感情が爆発しているときに言葉はほとんど届きません。落ち着いてから「順番だったね」「次はどうしようか」と短く伝えましょう。
④ 「自分で」へ少しずつ移行する 3歳以降は、「どうしたら落ち着けるかな?」と問いかけながら、自分で考えるきっかけをつくっていきます。
⑤ あえて「待つ」 すぐに助けすぎると、自分で調整するチャンスが減ってしまいます。子どもが自分なりに落ち着こうとする時間を、少し見守ることも大切な関わりです。
自己調整力は、一気に身につくものではありません。できる日もあれば、できない日もある
——それが当たり前です。
共感して、一緒に落ち着いて、その繰り返しの中で、子どもは少しずつ「自分の気持ちと付き合う力」を育てていきます。
自己調整力の最初のステップ、抱っこについてはこちらの記事で解説しています↓↓
>>「2歳なのに抱っこばかり…大丈夫?作業療法士ママの実体験と発達的視点」

