1歳を過ぎると、周りの子が歩き始めることも増えてきます。
「うちの子、まだ歩かないけど大丈夫?」と不安になる方も多いと思います。
我が家の娘も、歩き始めは少しゆっくりだったので、不安に思う気持ちはとてもよくわかります。
この記事では、作業療法士(OT)の視点から以下の点をやさしく解説していきます。
1歳で歩かないのは珍しくありません
まずお伝えしたいのは、1歳になったばかりで歩かない子は、決して珍しくないということです。
歩き始めの時期には大きな個人差があり、一般的には1歳〜1歳半頃までに歩き始める子が多いとされています。
歩き始めまでの発達の流れ
歩くまでには、いくつかの段階があります。
この流れをしっかり経験していることが、安定した歩行につながります。
特にハイハイは、体幹やバランスを育てる大切な運動です。

歩けることは、赤ちゃんの世界を広げる

歩くことは、単に移動手段が増えるだけではありません。ひとり歩きの獲得は、その後の認知やコミュニケーションの発達にも影響すると考えられています。
ハイハイの頃は、興味のあるものを見つけても、そこまで移動するだけで精一杯なことが少なくありません。
しかし、歩けるようになると手が自由になり、人や物との関わりを広げられるようになります。面白いものを見つけて家族のところまで持っていくと、家族から「ちょうだい」などの言葉をかけられる機会も増えます。
また、立つ姿勢はハイハイの頃より視界が広がり遠くまで見渡せるため、人の顔や物がよく目に入るようになります。これは、指差しやバイバイなどのジェスチャーが増えることに繋がります。
歩くことは「移動できるようになる」だけで終わりではありません。新しい場所へ行き、新しい経験を積み、人とのやり取りを増やしていくための大切な一歩なのです。
ただし、歩き始めが早いからといって、特別に発達が早いわけではありません。
1歳を過ぎても歩かない理由
歩かない理由の多くは、「問題」ではなく発達のペースや特徴の違いです。よくある理由としては、次のようなものがあります。
歩くための体の準備中
歩くためには、筋力や体幹の安定といった体の準備が必要です。
赤ちゃんは、ハイハイやつかまり立ち、伝い歩きなどを繰り返す中で、少しずつ歩くための体の準備を整えています。
また、体格の違いによって体を支える負担が異なることもあり、歩き始める時期に多少影響することがあります。
一人ひとり体の準備が整うペースは違うため、歩き始めの時期にも個人差が生まれます。
神経の働きが育っている途中
歩くためには筋力だけでなく、バランスを取ることも必要です。
つかまり立ちや伝い歩きができていても、手を離してバランスを取る、重心を移動させる、転びそうになった時に立て直すといった動きには別の難しさがあります。
このような動きには、姿勢をコントロールする神経の働きが関与しています。
赤ちゃんは伝い歩きや立ったりしゃがんだりを繰り返しながら、少しずつバランスの取り方を学んでいます。
気質の影響
赤ちゃんの気質も、運動発達に影響する可能性があります。
活動的な子は何度転んでも挑戦する、慎重な子は安全だと思えるまで歩き出さないといった違いです。すると、経験量は何倍も違ってきます。
もちろん、慎重だから発達が遅いということではありません。その子らしい挑戦の仕方の違いと言えるでしょう。
ハイハイが便利すぎる
ハイハイが上手な子は、移動で困っていません。
そんな状態なら、赤ちゃんにとって歩く必要性はそれほど高くありません。
大人も、困っていない方法をわざわざ変えることは少ないですよね。
「立つ」と「歩く」は別の発達
つかまり立ちはできるのに歩かないと思っていても、赤ちゃんは新しい課題に取り組んでいることがあります。
手を離して立つ、方向転換する、しゃがむといった動きは、歩行に必要なバランスや体の使い方を養います。「立てるのに歩かない」ように見えても、赤ちゃんの中では歩行に向けた準備が進んでいることも少なくありません。
歩き始めると、赤ちゃんはこれまでのハイハイとは全く違う体の使い方を学ぶことになります。歩く直前の時期は、そのための準備をしている期間とも言えるでしょう。

我が家の体験談:歩き始めはゆっくりでした

実は、我が家の娘も歩き始めはゆっくりでした。
1歳の時点では、つかまり立ちはできるものの、手を離して立てるのはほんの1秒ほど。
1歳1ヶ月頃には、ガラガラを押して歩く様子はありましたが、自分で止まることができず、前につんのめってしまうこともありました。
そして、1歳2ヶ月でようやく5〜6歩ほど歩けるように。そこからは一気に歩ける距離が伸びていきました。
また、ずり這いやハイハイの時期に左右差が大きかった影響か、歩き始めの頃は歩き方にも左右差が見られました。しかし、こちらも次第に気にならなくなっていきました。
このように、歩き始めのタイミングや経過には個人差があります。少しゆっくりに感じても、その子なりのペースで発達していくことも多いです。
注意して見ておきたいサイン
多くの場合は心配いりませんが、次のような様子がある場合は、一度相談を検討してもよいでしょう。
ママやパパの「気になる」という感覚も大切なサインです。
家庭でできる関わり方
歩かせようと頑張るよりも、土台となる力を育てる関わりが大切です。
無理に歩かせない
手を引いて歩かせるよりも、ハイハイや伝い歩きなど、自分で動く経験を大切にします。
大人が手を引いて歩かせると、赤ちゃん自身がバランスを調整する機会が少なくなり、本来経験できるはずの体の使い方を十分に学びにくくなることがあります。
裸足で過ごす
お部屋の中ではなるべく裸足を推奨します。
歩き始める前の時期は、足裏で床を感じながら体重を支える経験が大切です。自分の力で立ったりしゃがんだりを繰り返すことで、足裏の感覚を活用しながらバランスを取る力が育っていきます。
しゃがむ・立つ遊び
おもちゃを置く位置や遊び方を工夫して、自然に立ったりしゃがんだりする動きを引き出せる環境を作ってみましょう。
押して歩く遊び
手押し車や家具などを使って、楽しく体を動かす機会を増やします。
まとめ:その子のペースを大切に
1歳を過ぎても歩かないと不安になりますが、歩き始めの時期には大きな個人差があります。多くの子は、準備が整ったタイミングで自然に歩き始めます。
歩けるようになることは、自ら人に働きかける機会が増え、「人と気持ちを共有する」といったコミュニケーション面で良い影響を与えます。
しかし、早く歩けたからといって特別に発達が早いとも限りません。歩く前の時期に試行錯誤することは、子どもの発達にとってとても大切な経験です。
焦らず、その子のペースを大切にしながら、日々の関わりを楽しんでいきましょう。


